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2025.10.11
- 健康
【専門家が解説】がん治療の新たな光?今こそ知りたい栄養素「ビタミンD」の可能性
みなさん、こんにちは。
まにわクリニック院長の馬庭です。
「がん」という厳しい現実と向き合う中で、ご本人様はもちろん、ご家族様も「治療効果を少しでも高めたい」「副作用を和らげ、QOL(生活の質)を維持したい」
と、日々さまざまな情報を探されているのではないでしょうか。
標準治療と並行して、食事や生活習慣で何かできることはないだろうか。
その切実な思いに応えるため、今回は、近年世界中の研究者から注目を集めている栄養素、「ビタミンD」に焦点を当てます。
なぜ今、ビタミンDががんの治療において重要視されているのでしょうか?
最新の研究で明らかになってきた驚くべき役割から、具体的な摂取方法、そして専門家によるサポートの重要性までを解説します
1. なぜ今、がん治療に「栄養素」が重要なのか?
がんという病気は、私たちの身体から多くのエネルギーと栄養素を奪っていきます。最先端の治療を受けるにあたり、その効果を最大限に引き出し、同時に身体への負担を軽減するためには、しっかりとした土台作りが必要です。その土台こそが、日々の栄養管理なのです。
治療の土台となる身体づくり
手術、化学療法、放射線治療といった標準治療は、がん細胞に大きなダメージを与えると同時に、正常な細胞にも少なからず影響を及ぼします。
適切な栄養が満たされていなければ、体力や免疫力の低下を招き、治療の継続が困難になったり、回復が遅れたりする可能性があります。癌によって寿命が縮まる一番の要因は栄養障害、体の正常な機能の低下によるものです。
質の高い栄養素を十分に摂取することは、治療という長い闘いを乗り越えるための基盤を固めることに他なりません。
QOL(生活の質)の維持と栄養管理
治療中は、食欲不振や味覚の変化、倦怠感など、さまざまな副作用に悩まされることも少なくありません。しかし、そのような時こそ、意識的な栄養摂取がQOL(生活の質)を維持する鍵となります。バランスの取れた栄養状態は、精神的な安定にも繋がり、「病に立ち向かう力」を内側から支えてくれるのです。
2. 「太陽のビタミン」ビタミンDとは?基本的な役割をおさらい
ビタミンDは、私たちの健康維持に不可欠な栄養素の一つです。以前からカルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にする働きが知られていましたが、実はそれだけにとどまりません。
ビタミンDの主な働き
ビタミンDは、体内の様々な細胞機能を調節する「ホルモン」に近い働きを持つことが分かっています。主な役割として、
● 骨の健康維持(カルシウム・リンの吸収促進)
● 血糖値の調節
● 免疫機能の調整
● 細胞の正常な増殖のコントロール
などが挙げられます。特に「免疫機能の調整」や「細胞増殖のコントロール」といった働きが、がんの分野で注目を集める理由となっています。
なぜ現代人は不足しがちなのか?
ビタミンDは、日光(紫外線)を浴びることで皮膚で生成されるため、「太陽のビタミン」とも呼ばれます。しかし、屋内での活動時間の増加、日焼け止めの使用、食生活の変化などにより、現代人の多くがビタミンD不足の状態にあると指摘されています。
様々な疫学調査でも、日本人の9割がビタミンD不足であることが報告されています。
3. 【最新研究】ビタミンDとがん治療の関連性
ここからは、ビタミンDとがん治療の関連について、世界中でどのような研究が進められているかを解説します。あくまで研究段階のものも含まれますが、期待される可能性についてご紹介します。
研究が示唆する3つの可能性
近年の多くの基礎研究や観察研究において、血中のビタミンD濃度が、特定のがんの発症リスクやその後の経過と関連性が指摘されています(※1)。
具体的には、
1. 細胞増殖の抑制: ビタミンDが、がん細胞の無秩序な増殖にブレーキをかける働きを持つ可能性。
2. アポトーシスの誘導: 不要になった細胞や異常な細胞を自死させる「アポトーシス」という仕組みを、がん細胞において促進する可能性。
3. 血管新生の阻害: がん組織が栄養を得るために新しい血管を作る「血管新生」を妨げる可能性。
これらのメカニズムが、がんの進行を遅らせる一助となるのではないかと期待されています。
免疫システムへの貢献
私たちの身体には、がん細胞などの異物を発見し、攻撃する「免疫」という優れたシステムが備わっています。がんは免疫が低下し、異常な細胞を発見できないところから生じていきます。
ビタミンDは、この免疫システムが正常に機能するために不可欠な栄養素です。特に、免疫細胞であるT細胞やマクロファージの働きを活性化させることが報告されており(※2)、がんと闘う身体の抵抗力をサポートする上で重要な役割を担っていると考えられています。
各種治療との相互作用
一部の研究では、ビタミンDが化学療法や放射線治療の効果を高めたり、副作用を軽減したりする可能性も報告され始めています(※3)。
ただし、これらはまだ研究途上の段階であり、すべてのがん種やすべての治療法に当てはまるわけではありません。自己判断で過剰に摂取するのではなく、必ず主治医や専門家と相談することが重要です。
4. あなたは大丈夫?ビタミンD不足のサインとリスク
ビタミンDは不足していても明確な自覚症状が現れにくいため、「隠れ不足」に陥りやすい栄養素です。しかし、身体は わずかなサインをだしてくれているかもしれません。
気づきにくいビタミンD不足の症状
以下のような症状に心当たりはありませんか?
● なんとなく体力が落ちた、疲れやすい
● 気分が落ち込みやすい
● 骨や背中、筋肉に痛みを感じる
● 風邪をひきやすくなった
これらの症状は他の原因でもおこりますが、ビタミンD不足の可能性があります。正確な状態を知るには、血液検査で血中25(OH)D濃度を測定するのが最も確実です。
がん治療におけるビタミンD不足の影響
がんの治療を受けている方がビタミンD不足に陥ると、骨密度の低下(骨粗しょう症のリスク増)、免疫力の低下による感染症リスクの増加、倦怠感の増強など、様々な不利益が生じる可能性があります。治療を乗り越えるための資本である「身体」を守るためにも、ご自身のビタミンDの状態を把握しておくことは非常に重要です。
5. がん治療中にビタミンDを賢く補う方法
では、ビタミンDを効果的に補うにはどうすればよいのでしょうか。「食事」と「サプリメント」の2つのアプローチについて解説します。
食事から摂取する際のポイント
ビタミンDを豊富に含む食材は限られていますが、日々の食事に意識的に取り入れることが大切です。
● 魚類: サケ、マグロ、サバなどの脂の多い魚
● きのこ類: シイタケ、マイタケなど(特に天日干ししたもの)
● 卵: 卵黄
これらの食材をメニューに加えることで、他の必須栄養素も同時に摂取できるというメリットがあります。ただし、がん治療中の食事は、消化のしやすさや患者様の状態に合わせる必要がありますので、管理栄養士などの専門家に相談しながら進めましょう。
サプリメントを活用する際の注意点
食事だけで十分な量を補うのが難しい場合、サプリメントの活用が有効な選択肢となります。しかし、ここで最も重要なのは「自己判断で進めない」ことです。
● 必ず主治医に相談する: 現在受けている治療との相互作用や、患者様個々の病状によって、摂取すべきでない場合もあります。特に骨粗鬆症で活性型ビタミンD製剤を服用されている場合、血中カルシウム濃度が上昇するなどの副作用が出現しやすくなる可能性があります。
● 品質を見極める: サプリメントは多種多様です。信頼できるメーカーの、品質が保証された製品を選びましょう。
6. 個別化栄養アプローチのすすめ
ここまでビタミンDの重要性について解説してきましたが、がん治療における最適な栄養素のバランスは、一人ひとり異なります。年齢、性別、がんの種類、進行度、治療内容、そして遺伝的背景まで、考慮すべき要素は多岐にわたります。
なぜ専門家のサポートが推奨されるのか
溢れる情報の中から、ご自身やご家族にとって本当に必要な情報だけを選び出すのは至難の業です。当院では、医学的根拠に基づき、血液検査データなどを参考にしながら、あなただけの「個別化栄養プラン」を設計します。これにより、栄養素の過不足を防ぎ、治療効果の最大化と副作用の軽減を目指すことが可能になります。
あなたに最適な栄養戦略を見つけるために
人の身体は千差万別です。人によって不足する栄養素、吸収率、効果も異なります。
「あの有名人がおすすめしているから」などの理由だけで食材やサプリメントを取り入れても効果が出る人とそうでない人に別れるのは個体差があるからです。専門家に相談することは、貴重な時間を節約し、精神的な安心感を得るための賢明な「健康投資」と言えると考えます。
7. まとめ:希望ある未来への栄養戦略
がん治療は、時に長く、険しい道のりです。しかし、最先端の医療に加え、ご自身の身体を内側から支える「栄養」という強力な武器を手にすることができます。
今回ご紹介したビタミンDは、その可能性の一端に過ぎません。重要なのは、正しい知識を身につけ、信頼できる専門家とともに、ご自身に合った戦略的な栄養管理を実践することです。
この記事が、あなたの未来をより明るく照らす一助となることを心から願っています。
参考文献
● (※1) Garland, C. F., et al. (2006). The role of vitamin D in cancer prevention. American Journal of Public Health, 96(2), 252-261.
● (※2) Aranow, C. (2011). Vitamin D and the immune system. Journal of Investigative Medicine, 59(6), 881-886.
● (※3) High-Dose Vitamin D3 Supplementation in Patients with Metastatic Colorectal Cancer: A Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Trial. JAMA. 2019;321(14):1370-1379.
● (※4) Effect of Vitamin D Supplementation on Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy in Patients With Breast Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis. Integrative Cancer Therapies. 2022;21.
● (※5) Vitamin D3 and its Potential to Ameliorate Chemical and Radiation-Induced Skin Injury During Cancer Therapy. Disaster Medicine and Public Health Preparedness. 2024;18.
● (※6) Impact of Vitamin D Supplementation on Head and Neck Cancer Patients. Reports of Practical Oncology & Radiotherapy. 2024;29(3):511-519.
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