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2023.11.28
- 健康
内科・循環器専門医が行う腸活
みなさん、こんにちは。
まにわクリニック院長の馬庭です。
医学界でも、世間一般でも腸に注目が集まっています。
今回は、当院がおすすめする腸活について、実際の検査などを含めご紹介いたします
1. 腸の働き
腸と聞いて、みなさんはどのような働きをイメージされますか?
「食べ物を分解して吸収し、便を排泄するための臓器だけでは?」と思われる方も多いのではないでしょうか。
実は、腸にはそれ以外にもさまざまな働きを有していることがわかってきています。
ざっと上げるだけでも
● 食物の分解と消化
● 栄養の吸収
● 病原体からの防御
● 全身の免疫の調節
● 短鎖脂肪酸の産生
● ビタミンの産生
● ホルモンの産生
などが挙げられます。
例えば消化に関していえば、糖質を分解するためにアミラーゼ、タンパク質を分解するためにプロテアーゼ、脂質を分解するためにリパーゼと呼ばれる消化酵素を作り、腸管に分泌して消化を行っています。
ただ吸収するだけではなく、腸管上皮細胞、細胞同士をつなぎとめて異物が入らないようにするタイトジャンクション、粘液や免疫タンパク質(IgA)、抗菌ペプチドなどを作って病原体や未消化物質からの侵入も防いでくれています。
2. 腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸
腸には100~1000兆個、約1000種類の腸内細菌が存在していることが報告されています。
これらの細菌はお互いにバランスを取り、私たちのカラダに有益な作用をもたらしてくれています。
その一つが短鎖脂肪酸の産生です。
短鎖脂肪酸とは炭素原子が6以下で繋がれた脂肪酸であり、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられます。
腸内の良性細菌(共生細菌)は食物繊維の水溶性難消化性デンプン質を分解して短鎖脂肪酸を作り出してくれています。
作り出された短鎖脂肪酸によって
● 粘液の分泌を促進
● 免疫タンパク質のIgAの産生
● 腸の修復
● 制御性T細胞の産生と免疫の調節、免疫寛容
● タイトジャンクションの修復
● 炎症の抑制
などの作用をもたらしてくれています。
短鎖脂肪酸があるから、腸がうまく働き、修復を促し、免疫を調節してアレルギーや炎症性疾患から身を守ってくれているのです。
3. 腸内細菌が作り出すビタミン
良性細菌(共生細菌)が作り出してくれるのは短鎖脂肪酸だけではありません。
ビタミンも作り出してくれます。
腸内細菌が作り出すビタミンには
● チアミン(B1)
● リボフラビン(B2)
● ナイアシン(B3)
● パントテン酸(B5)
● ピリドキシン(B6)
● ビオチン(B7)
● 葉酸(B9)
● コバラミン(B12)
● ビタミンK
などがあります。多くのビタミンB群が腸で作られていることがわかります。
B群はエネルギーの産生や健康的なお肌の維持などに欠かすことのできないビタミンです。
また、ビタミンKには骨の形成の他、コラーゲンの生成、動脈硬化予防などの作用があり、こちらも重要なビタミンです。
4. 腸内細菌が作り出すホルモン
腸内細菌のなかのクロストリジウムは、トリプトファンを材料に短鎖脂肪酸を作り、それが刺激となってセロトニンの産生・放出をすることが報告されています。
これが神経を介して脳に伝わり、脳内の神経伝達物質のバランスに影響を与えることがわかってきています。
体内のセロトニンの95%は腸に存在することが報告されており、ホルモン産生臓器としても腸の重要性がわかりますよね。
5. 当院が行う腸活のための検査
腸が乱れると様々な疾患に罹患しやすいことが数多く報告されるようになってきています。
自己免疫性疾患、アレルギー、感染症、炎症性腸疾患、糖尿病、甲状腺疾患、不妊、多発性硬化症、認知症、発達障害、心臓病、がんなど・・・
当院では患者様にあわせたアプローチができるように、GI-MAPと呼ばれる腸精密検査を行っています。
これはqPCR技術を用いた検査で、僅かな菌でもしっかりと検出することが可能になっています。
この検査では、あなたの腸内細菌のバランスがわかるだけでなく、腸の消化能力、炎症の程度、免疫機能、太りやすさや病気のかかりやすさなどを予測することができます。
6. 検査をふまえた提案
例えば、腸の炎症を起こしてしまう病原菌や寄生虫などが挙げられます。
これまでの便検査では培養によって増殖してきた菌のみが検出可能でした。よって培養が難しかったり、環境によって増殖が難しい菌などに関しては、たとえ体内に存在していても見つけることが難しかったのです。
この検査ではより正確に評価ができるため、下の図のようにこれまではなかなか見つけることが出来なかったジアルジアなどの寄生虫も検出が可能となっています。
ジアルジアは近年日本でもちらほらと見かける寄生虫であり、慢性の下痢や腸の炎症、消化能力の低下などをきたす原因となります。
見つかった場合、症状に応じて除菌をおすすめしています。
ヘリコバクター・ピロリ菌も同様です。
もちろん菌の量が多ければ、胃カメラや保険診療の検査で検出することができますが、問題なのは極微量に存在していた場合です。
ピロリ菌は胃潰瘍や胃癌の原因となるだけでなく、消化不良、悪玉菌の増加、自己免疫性疾患(甲状腺疾患やエリテマトーデスなど)などの原因にもなる菌です。
ちなみに私も血液検査、胃カメラ、呼気検査などではピロリ菌は陰性でしたが、消化不良があり、便検査を行ったところピロリ菌が見つかり除菌しました。
この菌も状況に応じて除菌をおすすめしています。
それ以外にも、太りやすさの指標となる菌のバランスを見たり、短鎖脂肪酸や粘液、IgAなどを作り出す菌のバランス、腸の炎症状態や実際の消化酵素のバランス、グルテンに対する影響などを見ることができ、その結果に応じて適切なプロバイオティクスやプレバイオティクス、栄養素のご提案を行っています。
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
箕面・船場・千里中央・吹田・豊中にある まにわクリニックでは、保険診療ではできない腸内環境を解析し、栄養サポートを行っております。
自分の腸内環境が心配だ、治療に興味のある方、実際に治療を受けてみたい方など、お気軽にご連絡ください。