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2023.10.22
- 健康
糖尿病性足壊疽に希望の光!?キレーション治療
みなさん、こんにちは。
まにわクリニック院長の馬庭です。
糖尿病の合併症のひとつとして、足潰瘍、足壊疽などの糖尿病足病変があります。
足病変は痛みを伴ったり、感染症を引き起こしたり、重症になると足の切断や最悪死に至る合併症です。
足の血管に対してバイパス術やカテーテル治療などを行い、改善に向かうケースもありますが、多くは難治性であり、生活の室(QOL)や生命予後、健康寿命に大きな影響を与えます。
今回はそのような糖尿病性足病変に対する新たな治療選択肢をご紹介したいと思います。
1. 糖尿病の罹患率とは
糖尿病は遺伝的な要因に加え、生活習慣の乱れが続くことで生じる疾患です。
インスリンと呼ばれる「血糖値を下げる唯一のホルモン」の分泌が低下したり、効きが悪くなることで発症します。
日本では年々糖尿病患者が増加しており、厚生労働省の発表では「糖尿病もしくは糖尿病の可能性が否定できない」方は
約2,000万人
日本にいるとされています。
糖尿病で怖いのは、その合併症です。
神経症、網膜症、腎症などが有名ですが、QOLや健康寿命、余命を縮めてしまうもう一つの大きな合併症が糖尿病性足病変と呼ばれる合併症です。
2. 糖尿病性足病変とは
糖尿病性足病変とは、「神経障害や足に栄養を送る動脈の病気」と関連して、糖尿病患者さんの下肢に生じる感染、潰瘍、足組織の破壊性病変とされています。
糖尿病では毛細血管レベルの小さな血管が詰まったり、比較的大きな血管の内腔(血液が通りところ)が狭くなったりしてきます。
その過程で神経や足先に十分に栄養がいかず、神経損傷や潰瘍、骨を含めた足のダメージを生じるようになります。
欧米に比べて、日本での糖尿病性足病変の発症率は0.3~0.7%と低いとはされていますが(平成19年国民栄養調査、岩瀬氏ら「福岡県糖尿病患者データベース研究」)、日本にも2,000万人の糖尿病患者様がいることを考えると、毎年6~14万人の方が新たに糖尿病性足病変を抱えることになります。
3. 糖尿病性足病変になるとどうなる?
では、糖尿病性足病変を発症すると、どのようになるのでしょうか。
1つは、神経が損傷されるため、感覚が鈍くなり、靴擦れや低温やけどを起こしてしまい、そこから感染が広がったり、傷口がなかなか治らず、耐え難い痛みが持続することもあります。
また、血流が低下してしまうため、蜂窩織炎を含めた感染症に侵されやすくなります。これは怪我をしたときに起こるだけではなく、虫刺されなどの軽微なものからも発症してしまう可能性があります。
感染症や足の潰瘍などから、足の壊疽(足が腐ってくる状態)へと進行し、最悪切断を余儀なくされます。
足の指が壊死した場合、その局所のみの切断で済む場合はまだいい方です。血流の状況によっては膝関節付近や股関節付近での切断を迫られるケースも存在します。
ここまでくると、QOLは著しく低下しますし、大きな切断術を受けた患者様の2人に1人は2年以内に死亡するとのデータも出ています。
4. キレーションが新たな治療選択肢になりうる!?
糖尿病性足病変を発症した場合、どのような対処方法があるのでしょうか。
1つは血流を回復させる手術があります。これはカテーテルと呼ばれる細長い管を使用して、血管を広げる手術や、別の場所にある自分の静脈を移植してくるバイパス術などがあります。
それ以外にも透析の機械を用いて行うLDLアフェレーシスなどがあります。
ただ、このような治療を行っても十分に傷口が癒えず、足の切断にまで至ってしまう方が存在しています。
そのような中、アメリカはマイアミの心臓血管センターからキレーション治療に対する効果を検討した研究結果が発表されましたので紹介します。
この研究では糖尿病性足病変を有する平均年齢75歳の患者10名に対してキレーション点滴療法が行われています。
骨髄炎を併発している方や、重度の腎障害を有する方は除外されています。
1回目から20回目までは週に2回、それ以降は週に1回のキレーション点滴が行われ、合計40回を施行した状態が確認されています。
10名のうち、40回治療が終了できた方が7名であり、そのうち1名は血管の手術が必要でしたが、5名は傷口が完全に治癒されています。
キレーションを40回完了でいた7名に関しては、痛みやQOLは有意に改善を認めていました。
また、足の血流の指標となるSPPも治療前が22mmHgであったものが、20回目には46mmHg、40回目には36mmHgと、改善・維持されていました。
SPPは40mmHg未満は創部の自然治癒が難しいとされており、キレーション点滴を行ったのみで血流が改善したことに関しては驚きの結果となっています。
血流がよくなった1つの仮説としては、キレーションによって血管に蓄積した過剰なカルシウムの除去や、カドミウムや鉛といった血管の機能を障害させる有害重金属の除去が考えられます。
実際に今回の研究ではキレーション点滴によって鉛やカドミウム、アルミニウムといった金属が排泄されていることが示されています。
5. まとめ
糖尿病性足病変はQOL、健康寿命、生命予後に大きく関わる疾患です。
なにか1つの治療をすれば治るわけではなく、様々な方面からのアプローチが必要です。
今後さらなら大規模な研究は必要ですが、1つの選択肢としてキレーション点滴療法は強力なツールとなるのではないかと期待しています。
まにわクリニックではキレーション点滴を始め、さまざまな点滴療法を行っております。
症状が気になる、治療したい方など、お気軽にご連絡ください。