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2023.06.07

  • 健康

「月経前症候群(PMS)」とは

女性の方では、「月経前症候群(PMS)」という病名をご存知の方もいるかもしれません。
月経前になると、気分の変調や体調の変化をきたす状態で、近年増加傾向にあると考えられており、生殖年齢女性の70〜80%が月経前症候群(PMS)を有するといわれています。
本日は、多くの女性が有しているPMSについて解説します。

1. 月経前症候群(PreMenstrual Syndrome: PMS)とは?

月経前症候群(PMS)

「月経前症候群(PMS)」とは、月経前3〜10日間の黄体期後半に発症する多種多様な精神的、身体的症状で月経発来と共に減弱あるいは消失する状態をいいます。

日本では生殖年齢女性の約70〜80%の方が、月経前に何らかの症状を有すると言われており、約5.4%で社会生活が困難になるほどのPMSを有していると報告されています(Steiner M, et al. Arch Womens Ment Health 2003;6:203-9. Takeda T, et al. Arch Womens Ment Health 2006;9:209-12.)。

2. PMSの症状にはどのようなものがあるの?

月経前症候群(PMS)

症状としては、精神的な症状と身体的な症状を有すると言われています。

精神症状として、

  • イライラ
  • のぼせ
  • 怒りっぽくなる
  • 落ち着きがない
  • 憂鬱

月経前症候群(PMS)

身体症状としては

  • 下腹部膨満感
  • 下腹部痛
  • 頭重感
  • 頭痛
  • 乳房痛

などが挙げられます。
精神症状が強い場合は、月経前不快気分障害(PreMenstrual Sysphoric Disorder: PMDD)と呼ばれ、頻度は約1.2%と報告されています(Steiner M, et al. Arch Womens Ment Health 2003;6:203-9. Takeda T, et al. Arch Womens Ment Health 2006;9:209-12.)。

3. どうしてPMSが起きるの?

本来、生理周期後半はエストロゲンに対してプロゲステロンが優勢になっています。

月経前症候群(PMS)

プロゲステロンには妊娠の継続に必要であること以外にも、抗うつ作用、甲状腺ホルモンの働きを助ける、骨を形成、血栓予防、血糖コントロール、脳機能を保つ、体温をあげる、過剰なエストロゲンの作用を抑えるなどの作用が認められています。
月経周期後半に、何らかの原因でエストロゲンとプロゲステロンのバランスが崩れ、「エストロゲン(女性ホルモン)」が「プロゲステロン」に比べ優勢になってしまう結果、エストロゲンの作用が過剰になることで発症するのではないかと考えられています。

月経前症候群(PMS)

4. エストロゲンとプロゲステロンが崩れる原因

月経前症候群(PMS)

エストロゲンが過剰になってしまう原因はさまざま考えられますが、以下の要因が考えられます。

月経前症候群(PMS)

  • エストロゲンの代謝にはCOMTと呼ばれる酵素が必要です。COMTがしっかりと働くためにはビタミンB6が補酵素として必要となります。低血糖があるとアミノ酸から糖を作る回路(アラニン回路)が活発に働き、その際にビタミンB6が消費されます。血液検査の結果からはビタミンB6の消耗が疑われますので、結果としてCOMTがしっかりと働けていない可能性があります。
  • 環境ホルモン物質には女性ホルモン様作用(エストロゲン作用)を示すことが指摘されています。故に内分泌かく乱物質とも呼ばれています。プラスチックに含まれるビスフェノールA(BPA)、加工食品に含まれるダイオキシン、水道水の過塩素酸塩などが有名です。その他有害金属である水銀・鉛・カドミウムにもホルモンバランスを狂わすことが報告されています。BPAフリーでないラップを使用して電子レンジでチンするとBPAが漏れ出てくる可能性があります。(詳しくはこちらのサイトを参照ください)
  • 歯の詰め物がアマルガムなら、それも内分泌をかく乱させる原因になります。アマルガムに含まれる水銀は、さまざまな毒性が報告されています。現在多くの場合は厚生労働省が出している基準値以下にコントロールされていますが、基準値以下でも内分泌を狂わしたり、甲状腺機能障害、脳毒性などが報告されています。

月経前症候群(PMS)

近年東南アジア、東アジア地域では水銀の排出量が増加しており、国際的な機関も継承を鳴らしています(Global Mercury Assessment 2018)。

月経前症候群(PMS)
Global Mercury Assessment 2018より

  • 月経後半にプロゲステロンの濃度が維持できない要因の1つに、副腎疲労があります。副腎疲労があると、視床下部ー下垂体の機能が障害され、TSH放出ホルモン(TRH)と呼ばれるホルモンが過剰に放出される場合があります。するとプロラクチンと呼ばれる乳製刺激ホルモンが放出され、卵胞の成長や黄体機能が抑えこまれてしまいます。

5. PMSはどうやって診断するの?

PMSは症状によって診断されます。発症にはさまざまな要因が絡んでいるため、「この値を満たせばPMSです」というような診断基準はありません。
以下が日本産婦人科医会が提唱している診断基準です。

 

症状 診断基準
身体症状

乳房のはり、痛み

腹部膨満感

頭痛

関節痛、筋肉痛

体重増加

手足のむくみ

1)    過去3回の連続した月経周期のそれぞれにおける月経前5日間に、左の身体症状および精神症状のうち1つ以上が存在

 

2)    月経開始後4日以内に症状がなくなり、13日目まで再発しない

 

3)    症状の発症が薬物療法やアルコールの使用によるものではない

 

4)    その後2周期にわたり症状が出る

 

5)    社会活動や学業、仕事に明かに支障がある

精神症状

抑うつ(気分の落ち込み)

怒りの爆発

いらだち

不安

混乱

社会からの引きこもり

日本産婦人科医会2020:174-6.を改変

6. ホルモンのバランスを見るにはどうしたらいいの?

正確に病態を把握するには、唾液によるホルモン検査が必要です。ただし、費用がかかるため、なかなか検査できないと思われる方も多いと思います。

プロゲステロンがしっかりと分泌できているかどうか(黄体機能が働いているか)をみる簡易的な方法は、ズバリ「基礎体温を測る」ことです。排卵が起こり、プロゲステロンが分泌されてくると、体温が0.3度上昇するとされています。しっかりとプロゲステロンが分泌されている場合、速やかに体温が上昇し、高温相が12日以上持続します。「体温上昇に3日以上かかる」「高温相が12日以下で終わってしまう」などはプロゲステロンが十分に分泌できていない(黄体機能が低下している)可能性があります。

まにわクリニックでは唾液によるホルモン検査も実施しています。検査する順番などもあるため、ご希望があればご相談いただければと思います。

7. 辛いPMSに対して、何をしたらいいの?

正確に病態を把握するためには、各種検査を推奨しますが、お勧めしたいケアが3つあります。

食事、生活習慣の改善

私たちが食べている食事には、グルテン(パン、めんなど)やカゼイン(牛乳、乳製品)と呼ばれるタンパク質がたくさん含まれています。これらには内分泌かく乱作用があることが報告されています。そのためエストロゲンとプロゲステロンのバランスが崩れてしまいます。

アルコールも、肝臓での解毒機能を低下させてしまうため、エストロゲンが代謝されず、PMSの原因になることがあります。

このように内分泌を狂わせる食材や環境ホルモンを避けることが重要です。

それ以外には、運動や睡眠をしっかりと確保することで、カラダのデトックス機能を高めることが大切です。

副腎疲労ケア

副腎疲労(詳しくは別のブログで)があると、カラダのさまざまなホルモンバランスが障害されてしまいます。副腎疲労の方でよく見られるのが、夕方や夜間の低血糖です。低血糖があると余計に副腎疲労が悪化してしまい、悪循環に陥ってしまいます。
低血糖にはこまめな捕食(小さなおにぎり、ボーンブロススープ、さつまいもなど)をとることが大切です。

自律神経のバランスを整える

自律神経のバランスが乱れることで、PMS、副腎疲労なども悪化してしまいます。体を温める、めいそうをする、嫌な人には会わない、鍼灸治療などでバランスを整えていきましょう。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。PMSなのではないか、不妊で治療しているが、なかなか妊娠しないなどでお悩みの方は是非一度ご相談ください。

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