Blog Detail
健康ブログ詳細
2023.06.06
- 健康
適切なサプリメントを選ぶためには
健康寿命の延伸が課題となる昨今、サプリメントを服用されている方も多いのではないでしょうか?
ドラッグストアやインターネットではさまざまな効能を歌ったサプリメントが販売されています。
たくさんあり過ぎて、「どれを選べば良いか分からない!」と悩まれている方も多いのではないでしょうか?
今回はそんなあなたのために、サプリメントの考え方、適切な選び方をお教えします。
1. 「バランスの良い食事をとっていれば栄養バランスは大丈夫」は過去の話!?
現代の食材は、生産効率の向上・保存状態の向上を優先した結果、栄養価が低くなっている(カロリーはあるけど、必要な栄養素が少ない)と言われています。
これは文部科学省から発表されている日本食品標準成分表1960年版と2010年版の比較です。もちろん測定技術が異なっているため、正確な比較は難しいですが、農薬の使用、堆肥の代わりに化学肥料の使用などにより、地力の低下(土壌の栄養成分が痩せこけてしまう)などの要因によって作物の栄養価が下がっているのではないかと考えられています。
野菜に関しては、栽培技術の進歩により1年中出荷されているものも多くなっています。
でも、美味しくなるのは旬の時期です。旬と旬以外ではどれくらい栄養価が違うのでしょうか。
これも日本食品標準成分表2020年版からのデータです。旬かそうでないかで、ビタミンCが3倍も違うことがわかります。
そう、しっかりと食べているつもりでも、食べる時期によって栄養価が不足しうるのです。
その結果、バランスの良い食事をとっているつもりでも、必要なミネラルやビタミンなどが不足している方をよく見かけますし、実際のデータでも栄養不足が指摘されています。
日本人の食事摂取基準2020年版に対する国民健康・栄養調査結果を元にした比較
ほとんどの項目で推奨量に達していない・・・驚きですよね。
2. 足りない栄養素は人それぞれ
近年の健康ブームにより、雑誌や広告で取り上げられているサプリメントを服用している方も多いのではないでしょうか?
でも、人は皆、遺伝子も違えば、生きている環境、食べているものも同じではありません。遺伝子が違えば、食べた栄養素に対する吸収の仕方、使われ方も異なります。一卵性双生児であっても生まれてからの環境、食生活は異なりますから、当然栄養状態も異なってきます。
これは英国BBCが制作した画像です。
40歳まで喫煙した場合(左)と喫煙しなかった場合(右)の顔の比較です。タバコを1本吸う毎に、体内のビタミンCが25mg消費されることが知られています。これは残念ながら特殊メイクで作成されていますが、双子でも環境が変われば栄養状態も全く異なってしまう良い比較だと思います。
そう、足りない栄養素は人によって種類も量も全く異なるのです。サプリメントに対する大規模な比較試験がなされ、多くは「サプリメントに有効性無し」と結論付けられていますが、不足する栄養素の種類や量は人それぞれなので、単一の栄養素を同じ量投与すれば、効く人もいれば、効かない人もいます。大きなマスで見てしまうと有効性が得られないのは当然なのではないでしょうか。
一流のプロスポーツ選手は、自分の体に必要な栄養素をサプリメントで補うことで、体格や運動能力を向上させ、これまでにない記録を打ち立てています。この影には、栄養のプロが必要な栄養素を判断し、日々支えているのです。
3. 市販サプリメントと医療用サプリメント〜量〜
市販されているサプリメントには、本当に効果が得られる量が含まれていない商品も多く出回っています。
ドラッグストアに行けば、比較的安価なサプリメントを容易に手に入れることができます。みなさまは成分表示をご覧になったことがありますか?
確かに必要な栄養成分が多数記載されています。
しかし、その量は充分なのでしょうか?
A社 | H社(医療用サプリ) | |
ビタミンA(μg) | 770 | 5000 |
ビタミンB1(mg) | 12 | 50 |
ビタミンB2(mg) | 14 | 50 |
ビタミンB6(mg) | 13 | 40 |
ビタミンB12(μg) | 24 | 100 |
葉酸(μg) | 240 | 400 |
ビタミンC(mg) | 100 | 500 |
ビタミンD(μg) | 5.5 | 25 |
ビタミンE(mg) | 6.3 | 134 |
カルシウム(mg) | 136 | 200 |
マグネシウム(mg) | 64 | 100 |
鉄(mg) | 2.3 | 0 |
亜鉛(mg) | 2.9 | 15 |
これは比較的大手が販売しているサプリメント(A社)と日本の医療用サプリメントを販売しているH社のサプリメントの比較です。医療用サプリメントとは、医療機関のみが扱えるサプリメントです。
含まれている種類はほぼ同じでも、内容量が全く異なることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
ビタミンの場合、不足して病気にならないための必要最低限の量と、健康増進を得るための量とでは全然必要な量が異なります。
4. 市販サプリメントと医療用サプリメント〜質〜
ネットでは、比較的高容量のサプリメントも安価で販売されています。同じ成分、同じ容量が記載されていれば、効果は同じなのでしょうか?
答えは「No」です。
水溶性(水に溶けやすい)ビタミンであるB、Cなどは、成分の抽出が大変煩雑で難しいとされています。しっかりと記載された容量をサプリメントに含有させるためには手間暇がかかり、その分費用がかかります。その工程を簡略化してしまうと、有効成分が洗い流されてしまい、記載されている量が含有されなくなってしまいます。
例えば、アンチエイジングで近年注目されている栄養素「NMN」ですが、ECサイトでも多数サプリメントが販売されています。米国では、実際アマゾンで販売されているNMNサプリメントの含有量を調査した結果が報告されています。
この報告で衝撃的なのは、22商品中、14品でほとんど成分が検出されませんでした。
ND:NMN未検出、BRL:ラベル記載値の1%未満
せっかく効果を期待してサプリメントを摂取しても、中身が入っていなければ全く意味がありませんよね。
5. たくさん入っていれば大丈夫?
サプリメントは見た目では、実際どれくらい栄養素が含有されているか全くわかりません。これを担保するためには、原材料から製造工程、出荷され消費者に届くまでしっかりと品質が管理されているものを選ぶ必要があります。これが担保されているのが医療用サプリメントというわけです。
一例として、プロバイオティクスを見てみましょう。
腸内細菌のバランスや特定の菌種における健康増進効果が報告されており、乳製品やサプリメントとしてプロバイオティクスを服用されている方も多いと思います。
プロバイオティクスによる効能を得るためには、十分な量を取る必要があります。
でもみなさん、実際に服用する段階でどれくらい菌が生き残っているか分かりますか?
メタジェニックス社 藤井祐介様のスライドより掲載
これは、私も愛用しているメタジェニックス社が実施している、菌株の安定性に関するデータです。ある条件において、目的とする菌がどれくらい生き延びているかを検査しています。
さらに、わざと過酷な輸送試験(本来の完成品は冷蔵で輸送されますが)を行い、その後消費者の手に渡った時にどれくらい目的の菌が生き延びているかもチェックしています。
メタジェニックス社 藤井祐介様のスライドより掲載
しっかりとした商品を提供したい思いが伝わってきます。
製造した段階で記載通り菌が含まれていても、輸送環境や保管期間によって、実際服用する時には記載されている量が含まれていない可能性があるのです。これは見た目では分かりません。だから、製造から輸送、その後の保管に至るまで質が担保されている医療用サプリメントが有効だと考えられます。
6. 取り過ぎは注意
ただし、なんでもかんでもたくさん摂れば良いと言う訳ではありません。
水溶性ビタミン(ビタミン B群やビタミンC)の場合は、過剰に摂取しても過剰分が尿から排泄されます。
しかし、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)は、過剰分が脂肪などに蓄積されてしまい、弊害を来たすことがあります。
また、ミネラルに関しても体の中のバランスが重要です。
例えば「鉄」に関しては、鉄の吸収を良くしたキレート鉄をサプリメントで服用し続けた結果、鉄が過剰に蓄積してヘモクロマトーシスという病気を併発してしまう患者様もおられます。
検査で自分の状態を把握し、適正な量を服用することが重要です。
当院が行うサプリメント外来では、医師が血液検査や問診などで患者様の不足している栄養素を評価し、一人一人に最適なサプリメントの組み合わせを提案します。
自分に最適な栄養素をサプリメントで補い、栄養素の持っている働きを最大限活用することで、人が本来持っている治癒力を最大限発揮させ、最適な健康状態を共に手に入れていきませんか?