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2023.06.05
- 健康
ヘリコバクター・ピロリ菌とは
みなさんは「ヘリコバクター・ピロリ菌」をご存じでしょうか?
近年は胃がんとの関連が報告され、除菌によって高い確率で胃がんを予防できることから、多くの医療機関で啓蒙活動が行われており、お聞きになった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回はそんなピロリ菌について解説します。
1. ヘリコバクター・ピロリ菌とは
ヘリコバクター・ピロリ菌とは、胃の粘膜を中心に、上部消化管に生息します。
従来は、細菌も存在できないと考えられていました。しかし、最近の研究により、胃の中でも存在できる、ピロリ菌という細菌がいることがわかりました。
ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を出して、自分の周りにアルカリ性のアンモニアを作り出すことで、胃酸を中和しながら、胃の中に存在しています。
近年は衛生環境の改善に伴い罹患者は減少傾向ですが、世界的には約半数の人が感染していると報告されています(日本人では60歳以上で60%以上が感染)。
2. ピロリ菌は胃炎、胃潰瘍、胃がんの原因になる
ピロリ菌に感染し、それを自分の免疫でコントロールできなくなると、炎症をおこし始めます。
その結果、胃粘膜の炎症を引き起こし、胃潰瘍が十二指腸潰瘍ができてしまいます。また、炎症が続くことで胃粘膜を萎縮させます。この状態が続くことでことで胃がんの原因になることが確認されています。
3. ピロリ菌によって胃粘膜が萎縮すると、栄養素の吸収ができなくなる
ピロリ菌によって胃の炎症が続いてしまうと、胃の粘膜が萎縮し胃酸の分泌が低下してしまいます。
タンパク質の分解、必要なミネラルやビタミンの吸収には胃酸が必要となります。
つまり胃酸の分泌が低下してしまうと、必要な栄養素(鉄、亜鉛、タンパク質、ビタミンなど)の吸収低下が問題になります。
4. ピロリ菌によってもたらされる病気とは
ピロリ菌によってもたらされる病気で有名なのが胃がんです。しかし、それ以外にも様々な病気との関連が報告されています。
血液疾患(血小板減少性紫斑病、リンパ腫)、自己免疫性疾患(全身性エリテマトーデス、バセドウ病、橋本病、ベーチェット病、自己免疫性肝炎など)などが報告されています。
5. ピロリ菌の検査を行った方が良い人とは
これまで解説したとおり、ピロリ菌はさまざまな疾患の原因となり得ます。
- ご両親やご兄弟にピロリ菌を持たれている方
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎と診断されている方
- 胃の症状など、なんらかのお腹の症状をお持ちの方
- お腹の膨満感をお持ちの方
- 自己免疫性疾患、膠原病と診断されている方
- タンパクの代謝が悪い方
- 食べているのに筋肉がつかない、体重が増えない方
などは、一度検査を受けた方がよいかもしれません。
6. ピロリ感染に対してなにをすべき?
さまざまな弊害が報告されている、ピロリ菌感染。なんらかの症状がありまだ検査をしていない方は、まず検査をしましょう。
すでにピロリ菌が陽性と診断されている方の場合、なんらかの症状をお持ちなら除菌を強くおススメします。症状を認めていない方に関しても、将来的に病気になる可能性があるため、やはり除菌をした方がよいでしょう。
7. ピロリ菌の検査とは?
保険診療でピロリ菌の検査を行う場合
一般的にはまず胃カメラとなります。胃や十二指腸に炎症を認めたり、萎縮を認めた場合、ピロリ検査を行います。
検査内容としては、
- 胃カメラの際に行う迅速ウレアーゼ検査
- 胃カメラを使用しない抗体測定検査、尿素呼気試験
などがあります。
自費で検査を行う場合
半年以内に胃カメラを施行していない場合、胃・十二指腸潰瘍や萎縮性胃炎を認めない場合には保険診療で検査を受けることが出来ません。
その場合には自費で抗体測定検査や尿素呼気試験などを受けることで検査が可能となります。
ただし、検査の結果ピロリ菌が陽性となった場合、現時点で胃がんが隠れていないかをチェックするために胃カメラを強くおススメしています。
8. ピロリの除菌療法の流れ
ピロリ菌の除菌は以下のような流れで行われます。
9. 私が思う、今の問題点
これまで解説したとおり、ピロリ菌にはさまざまな病気、症状の原因となり得ます。なので検査をすることをおススメしています。
しかし、中には通常の保険診療で行う検査ではピロリ菌を検出できない方がいます。多くの場合はタンパクの代謝が低下しているため、ピロリ菌に対する抗体(病原体をやっつける免疫タンパク質)が作れない方です。
このような場合、実際にはピロリ菌に感染しており、それがカラダに悪さをしているにもかかわらず、検査が陽性にならないため除菌されずに経過が見られてしまうのです。
私が診察している患者様で、ピロリ菌の感染を充分に念頭に置かなければならない、かつ通常の検査でピロリ菌が陰性であった場合、PCR技術を用いた便検査(GI-MAP)をおススメしています。自費検査であり、非常に高額ではありますが、現段階ではもっとも感度(病気を拾い上げる能力)が高い検査と考えています。
これは私自身の検査結果ですが、
- 胃カメラの結果は正常
- 尿素呼気試験も陰性
- 血液でのピロリ菌抗体検査も陰性
でした。通常の検査ではピロリ菌はいないと判断されます。
しかし、便検査(GI-MAP)を行ったところ、なんとピロリ菌が存在していました!
私自身の血液検査で胃酸の分泌が若干低下しており、「ピロリ菌いるかも?」と疑いをもって色々と検査を行った結果、ようやく検出することができたのです。
つまり、通常の検査で結果が陰性であったとしても、ピロリ菌が存在している場合があります。お金はかかりますが、生活の質や命に関わることもありますので、しっかりと検査をして「病気の根本原因」を見つけることが大切です。
まにわクリニックでは個々の状態に応じてさまざまな検査やサポートを行っています。
「これってピロリ菌と関係あるの?」など、疑問をお持ちの方はお気軽にご相談ください。