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2026.07.07

  • 健康

「痩せ薬」が男性の妊活を変える!?~GLP-1受容体作動薬がテストステロンと精子の質を改善する~

みなさん、こんにちは

大阪府北摂地域、箕面市船場にある、まにわクリニックの馬庭です。

最近何かと話題の痩せ薬、GLP-1作動薬(マンジャロなど)ですが、

海外では使用することで様々な有益な効果が報告されています。

もちろん自己判断やしっかりと病態を把握せずし使用することはおすすめしませんが、

適応や病態を理解した上で使用することで、これまで悩まれていた症状を軽減する可能性も示唆されています。

「肥満治療薬」として注目を集めているGLP-1受容体作動薬。実は体重を落とすだけでなく、男性ホルモン(テストステロン)や精子の質まで改善する可能性が、最近の学会で報告されました。

妊活や男性の健康に悩む方にとっては見逃せない話題です。

今回は循環器内科医・栄養の視点から、肥満と男性機能の関係、そして最新の研究結果について解説します。

1. 医学的背景と基礎知識:なぜ肥満は男性機能を低下させるのか?

この最新の知見を理解するためには、まず「肥満」と「男性ホルモン(テストステロン)」、そして「精子形成」の関連性を知る必要があります。

A. アロマターゼによるテストステロンの変換(エストロゲン化)

脂肪組織(特に内臓脂肪)には「アロマターゼ」と呼ばれる酵素が豊富に存在しています。この酵素は、男性ホルモンであるテストステロンを女性ホルモンであるエストロゲン(エストラジオール)に変換する働きを持ちます。なので、男性にも閉経前の女性よりは少ないですが、女性ホルモンであるエストロゲンが体内に存在しています。

肥満男性では脂肪組織が過剰なため、テストステロンが次々とエストロゲンに変換され、血中テストステロン値が低下します。

B. HPG軸(視床下部-下垂体-精巣軸)の抑制

先に述べた高すぎるエストロゲン値の他にも、食後の高血糖が続くことによって、血糖値を下げるためのホルモンであるインスリンの効力が低下していきます。これをインスリン抵抗性と呼びます。インスリンが効きにくくなると、体内では血糖値を下げるためにより多くのインスリンが分泌されるようになります。インスリンは糖を脂肪に変換して脂肪細胞に蓄積される作用があるため、肥満につながります。

肥満は全身に慢性炎症(サイトカインの分泌など)を引き起こします。

これらの機序が合わさることにより、脳の視床下部や下垂体にネガティブフィードバック(抑制信号)を送ります。これにより、精巣に「テストステロンを作れ」「精子を作れ」と命令するホルモン(LH:黄体形成ホルモンや、FSH:卵胞刺激ホルモン)の分泌が低下し、二次性の性腺機能低下症を引き起こします。

これが精子を作る力を低下させ、精子の減少や質の劣化を招き、不妊につながっていきます。

2. テストステロン(ホルモン補充)療法の落とし穴

 

これまで、テストステロンが低い肥満男性にはテストステロン補充療法(TRT)が行われることがありました。一見良さそうにも思いますが、ここに落とし穴があります。

外部からテストステロンを補充すると、脳は「体内に十分な男性ホルモンがある」と錯覚し、精巣に対するLH/FSHの刺激を完全に止めてしまいます。

その結果、精巣内での造精機能(精子を作る働き)がストップし、逆に精子の数や質が著しく低下(最悪の場合は無精子症)してしまうという致命的なジレンマがありました。

3. 最新の医学的知見:GLP-1受容体作動薬の新たな可能性

近年、セマグルチド(製品名:オゼンピック、ウエゴビ)やチルゼパチド(製品名:マンジャロ、ゼプバウンド)といったGLP-1受容体作動薬が、単なる体重減少を超えて男性の生殖機能に劇的な改善をもたらすことが明らかになってきました

① 米国内分泌学会(ENDO 2026)での報告

 

英国のWarwick Medical Schoolの研究チーム(Dr. Pratibha Nateshら)は、肥満とテストステロン低下を伴う男性(18〜65歳)を対象とした研究において、以下の結論を発表しました。

  • テストステロン値の増加と精子機能の改善: 16〜24週間のGLP-1薬の投与により、ホルモン値が安定・上昇するだけでなく、精子の数、運動率、さらに形態の正常な精子(正常なサイズと形を持つ精子)の割合が2%から4%へと有意に増加しました。
  • ホルモン補充療法との比較優位性: テストステロン補充療法を受けたグループは精子の減少をきたしましたが、GLP-1群は自身のホルモン産生能力(内因性の生成)を回復させ、生殖能力を維持・向上させました。

② 米国泌尿器科学会(AUA 2026)での報告:体重減少以外の多因子的効果

 

Mayo ClinicのDr. Andrés Heriberto Guillén-Lozoyaらの研究チームは、1,600人以上の患者の電子カルテを後ろ向きに解析しました。

  • 顕著なテストステロン上昇: GLP-1薬(セマグルチドまたはチルゼパチド)の投与を受けた男性の総テストステロン値は中央値320 ng/dLから419 ng/dLへ、遊離テストステロン値も有意に上昇しました。
  • 独立した作用機序の示唆: 最も興味深い発見は、このテストステロンの増加が「BMIの減少幅(体重の落ち具合)」だけでは説明がつかなかった点です。体重減少によるアロマターゼの減少だけでなく、GLP-1薬自体が持つインスリン感受性の改善効果、全身の抗炎症作用、HPG軸の直接的な機能回復など、複数のメカニズム(多因子的効果)が連動して男性ホルモンの産生を後押ししていると考えられています。

4. 私の考え

今回の報告はGLP-1の新たな効果を示す興味深い内容であると考えます。

ただし、注意していただきたいのは、今回の研究対象となっているのは「肥満のある方」という点です。

 

近年問題になっているのは、対して肥満体でもないのに薬を使用されたり、体調や病態をしっかりと把握されないまま、投与後にきちんとフォローされないまま利用されるケースがあることです。

有用な薬も使い方を間違えば逆に体調が悪くなることは十分にあります。

まにわクリニックでは、血液検査や食事内容、生活習慣などを評価した上で、安全にダイエット、体調管理を行うメディカルダイエット外来を行っています。

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院長 馬庭直樹

記事執筆者

まにわクリニック
院長 馬庭直樹(まにわなおき)

  • ・日本内科学会認定内科医
  • ・日本内科学会総合内科専門医
  • ・循環器専門医
  • ・心臓リハビリテーション指導士
  • ・日本心血管インターベンション認定医
  • ・脈管専門医
  • ・下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医
  • ・弾性ストッキングコンダクター
  • ・日本抗加齢医学会専門医
  • ・点滴療法研究会 高濃度ビタミンC点滴療法認定医
  • ・日本キレーション協会 キレーション認定医

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