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2023.06.22
- 健康
コロナ後遺症でお困りのあなたに届けたい!
新型コロナウイルスのパンデミックが起こって早くも4年が経ちました。5類感染症にも移行し、生活も日常に戻ってきていると思います。
しかし、中には新型コロナウイルスにかかってしまい、その後の後遺症で悩まれている方も多いのではないでしょうか?
今回はそんなコロナ後遺症について、後遺症になる理由、対処法などについて私の見解をお伝えしたいと思います。
1. 新型コロナ感染症後遺症とは?
新型コロナウイルスにかかった後に後遺症で悩まれている方のことをニュースなどでお知りの方もいるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスに感染すると、10人に1~3人が後遺症で悩まされていると報告されています(*1、2)。
Nature Med 2021;27:601-15より作図
後遺症の定義にはさまざまなものがあり、まだ定まったものはありませんが、一般的には新型コロナ感染症の発症から4~12週経過しても症状が続く場合や新しい症状がでてくる状態のことを「コロナ後遺症」と呼ばれています。
4週以上とされている理由は、ウイルスは4週以降は検出されないと報告されているためです。
後遺症は決してお年を召された方だけのものではありません。20代で1~2%認めることが報告されています。
2. 新型コロナ感染症後遺症にはどのような症状があるの
では、コロナ後遺症にはどのような症状があるのでしょうか。世界各国で報告されているデータをまとめたメタ解析によると、
● 倦怠感 58%
● 頭痛 44%
● 注意障害 27%
● 脱毛 25%
● 呼吸困難 24%
● 味覚障害 23%
● 睡眠障害 21%
● 咳 19%
など、多岐にわたっています(*3)
それ以外にも関連があるとされる症状を一覧でまとめてみました。
全身 | 疲労、筋肉痛、関節痛 |
神経 | 認知機能低下、頭痛、神経痛、痙攣、パーキンソン病の症状、ギラン・バレー症候群、横断生脊髄炎、ミオクローヌス、運動失調、味覚障害、感冒後異嗅症、嗅覚障害 |
呼吸器 | 呼吸苦、運動能力低下、咳、拡散能低下、拘束性肺障害、間質性肺炎 |
血液 | 血栓塞栓症、リンパ球減少 |
循環器 | 心機能障害、不整脈、心筋炎、冠動脈瘤、心筋線維化、動脈硬化 |
精神 | 不安、うつ、不眠、PTSD |
腎臓 | 腎血漿流量低下 |
皮膚 | 休止期脱毛症、湿疹 |
内分泌 | 糖尿病、亜急性甲状腺炎、橋本病、バセドウ病、骨がとける |
消化器 | 肝酵素上昇、吐き気、下痢、腹痛、腸内細菌叢異常、腸透過性亢進 |
自己免疫 | さまざまなタイプの自己免疫性疾患、抗リン脂質抗体、多臓器炎症候群 |
コロナ後遺症を発症するリスクとしては、コロナ感染症の重症度、女性、年齢、基礎疾患などが挙げられています。ただし、これらのリスク因子を持たれていなくても後遺症を発症してしまう方は存在しており、リスク因子が無いからと言って安心はできません。英国の住民調査では、7万6000人のコロナ患者を解析したところ、37.7%の人が12週以上にわたりなんらかの症状を有していたことが報告されています(*4)
また、米国からの報告では、新型コロナ感染症に罹患すると、高血圧症を1.81倍、糖尿病 2.47倍、睡眠時無呼吸症候群 1.1倍、疲労 2.2倍罹患しやすいことが示されています(*5)。
若年者でも精神疾患、不整脈、高血圧、糖尿病、記憶障害などのリスクが上昇することも報告されています。
3. なぜ後遺症がおこるのか?
では、なぜ後遺症をおこしてしまうのでしょうか。
諸説ありますが、以下にあげるようなことが原因ではないかと考えています。
● 肺、上気道、心臓、腎臓などへのウイルス持続感染、障害
● 治療薬の副作用
● 感染後の免疫力低下による炎症の持続(慢性炎症)
● 血液凝固が亢進し、血栓症による影響
● レニン・アンジオテンシン系の障害
● 栄養失調
● ミトコンドリア機能障害
● 脳幹の機能障害
小数例の報告ではありますが、新型コロナウイルス感染4~7ヶ月後も腸や咽頭(喉の奥)にコロナウイルスのRNAが検出され、そこでは炎症が持続的に生じていることが述べられています。
炎症は外敵を排除したり、壊れた組織を再生するためには必要な生体内の反応ですが、いつまで経っても炎症が治まらないと、正常な組織や細胞がどんどんと壊されてしまいます。
いま、炎症はさまざまな病気の原因、老化の原因であると報告されており、コロナ感染後に慢性的な炎症が続くことが、コロナ後遺症を発症してしまう一因ではないかと考えられます。
また、コロナウイルスの感染によってミトコンドリアの機能が障害されてしまうことも挙げられます。
ミトコンドリアはエネルギーの生産工場です。つまりミトコンドリアの機能が障害されることで、カラダはエネルギー不足になり、疲労感や息切れ、脱毛などさまざまな体調の不調をきたすことになるのです。
4. カギはACE2
聞き慣れない言葉がでてきました。「ACE2」というタンパク質はコロナ感染症を語る上では避けて通れない物質であり、あえてこの単語を出しました。
ヒトのカラダの中には「レニン・アンジオテンシン系」と呼ばれる調節機構が備わっています。これは血管の拡張や収縮、血液の凝固などに関わるもので、このシステムを使用して血圧の調節や血の塊を作ったりしています。
その際に登場する物質が「ACE」と「ACE2」となります。
簡単に説明すると、ACEは細胞死、線維化(組織が線維成分に置き換わり硬くなってしまうこと)、血管収縮(血圧をあげる)、血栓形成(血の塊をつくる)などの作用があり、逆にACE2は細胞の分化(目的の細胞に成長させること)、細胞保護、血管拡張(血圧を下げる)などの作用があります。
カラダはACEとACE2のバランスを取りながら必要なときには血圧を上げたり、血の塊を作ったりして組織の損傷に対応し、そうでないときは血管や細胞を守る働きをしています。
なので、このシステムが崩れてしまうと、血圧が上がったり、血管が傷んで動脈硬化がすすんだり、血の塊ができて、脳梗塞や心筋梗塞、臓器障害を来してしまいます。
コロナウイルスは感染する際にACE2を入り口として細胞の中に侵入してきます。
するとACE2の力が弱まってしまい、カラダの正常な部分にまでさまざまな障害を引き起こしてしまうのです。
新型コロナウイルスに感染したあと、急に亡くなってしまう方をニュースなどで見た方も多いのではないでしょうか。このような不幸な転機の1つの原因は、おそらくACE2の力が弱まり、血の塊ができて脳卒中や心筋梗塞を発症したことではないかと考えています。
5. コロナウイルスが腸内環境を悪化させる
上記でも出てきたACE2は腸にも多数存在しています。コロナウイルスが腸にまで侵入してくると、腸のACE2も低下させてしまい、腸内善玉菌の低下、悪玉菌やカビの増加、腸漏れ症候群(リーキーガット)を引き起こすことが報告されています(*6)。
また、ACE2は小腸でアミノ酸の吸収にも関わっています。コロナウイルスの影響でACE2が低下すると、特定のアミノ酸の吸収が著明に低下することが報告されています。
体内のすべての物質はタンパク質で作られています。そしてタンパク質の材料は20種類からなるアミノ酸です。20種類のアミノ酸は1つでも不足があると、十分にタンパク質がつくれなくなります。
脳、心臓、血管や赤血球、皮膚、ホルモン、消化酵素に至るまでタンパク質で出来ているので、タンパク質が体内で十分に作れなくなると、先に述べた多彩な症状の原因となってしまうのです。
6. コロナウイルスが脳機能を低下させる
英国からの報告によると、新型コロナウイルスに罹患することで、脳の大脳辺縁系や嗅皮質と呼ばれる部位の容積が減少し、認知機能が低下してしまうことが示されています(*7)。
原因はさまざまに考えられますが、ウイルス感染による炎症性サイトカインの影響、血液凝固による脳の虚血(酸素を含んだ血液が巡ってこない)などの要因が挙げられます。
7. コロナ後遺症になったときの対処法
では、どうすれば良いのでしょうか?
重要なポイントはACE2とミトコンドリアの機能を回復させることです。
そのために必要なことは、
● 定期的な有酸素運動
● 高強度インターバルトレーニング
● ポリフェノールの多い自然食品
● セージやローズマリー、オレガノ
● ビタミンD
● クルクミン、ケルセチン
● レスベラトロール
● αリポ酸
などが挙げられます。
脳の機能が気になる方はフィッシュオイルも良いでしょう。
ただし、必要な栄養素やその量、運動の強度などは、その方がどの程度障害されているかや、不足している栄養素は何かによって変わってきます。
コロナ後遺症で悩まれている方は、栄養外来を行っているクリニックや病院でサポートしてもらうのが良いでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
まにわクリニックではコロナ後遺症に悩んでいる方のために「栄養療法外来」を行っています。
カラダのどこに、どのような障害をおこしているのか、どのような栄養素が足りないのか、修復し後遺症を治すにはどのような順番で治療を行っていくのかをサポートしております。
興味のある方には無料相談も行っていますので、お気軽にご相談ください。
引用元
(*1)Https://covid.joinzoe.com/post\covid-long-term
(*2)新型コロナウイルス感染症の手引き 罹患後症状のマネジメント第2.0版
(*3)Sci Rep 2021;11:16144
(*4)REACT-2 Trial
(*5)Daugherty SE, et al. BMJ 2021; 373:n1098
(*6)Sofia D, et al. Aging Res Rev 2020;62:101123
(*7)Nature 2022;604:697-707